私の休日診療所日記など
医師会で編集委員をやっておりますので、時々休日診療所当番の日に駄文を載せさせて頂いてます
恥ずかしながら最近のものをUPさせて頂きます。
R6年3月20日(水・祝)
今日は春分ですが相変わらず薬不足が解消されない毎日です。
製薬会社の生産がそのうち追いついてくれば何とかなるだろうと思っていたのですが、先日とある雑誌を読んだらかなり深刻な状況の様なのでちょっと要約して載せさせて頂きます。
「解熱剤、咳止め、インフルエンザ治療薬まで様々な医薬品の欠品が相次いでいる。後発医薬品(ジェネリック)メーカーの出荷停止、制限が続いていることが原因だ。
欠品のきっかけは2020年11月、小林化工が販売する水虫治療薬に睡眠薬が混入し2人が死亡、服用者の交通事故も明らかとなったことからで、同社は薬機法で定める製造手順を遵守しておらず116日間の業務停止命令が下った。
その後、最大手の日医工を含む複数のジェネリックメーカーで同様の不祥事が発覚した。
日本ジェネリック製薬協会によると、2022年1月までに自主点検を終えた38社中、31社が販売する1000品以上の品目で薬機法違反が見つかったという。行政処分や自主回収が相次ぎ、政府は対応に追われているが焼け石に水の状態が続いている。
そもそも日本で小規模のメーカーがやってこられたのは、厚労省が護送船団方式で薬価を統制し、ジェネリックに高値をつけてきたからだ。現在、特許が切れて初めて発売されるジェネリックは先発品の五割(一部品目は四割)の薬価がつく(以前は八割の時代もあった)。
これまで日本のジェネリックメーカーは薬価抑制の甘さから大きな利益を上げてきた。さらに、日本独自の規制を数々かけて外資系ジェネリックメーカーに対し大きな参入障壁を設けてきた。
ところが近年の薬価抑制で従来の儲け方が通用しなくなってしまった。そこで生き残るためコストダウンに励んだ。これが製造手順を簡略化し虚偽の記録を作成するなど薬機法違反が続出した背景だ。しかしながら高齢化が進む我が国で医療費抑制は喫緊の課題であることは明白で、安価な医薬品の安定供給のためには厚労省は規制を撤廃し、海外の巨大ジェネリックメーカーの参入を進める以外に方法はない。独自の薬価算定法も見直さざるをえず、やがて、彼らが日本市場を支配する。国内メーカーは淘汰が進み、生き残れても外資の傘下となる運命だ。」
だそうです。なんか(競争力の弱い)他の日本企業と同じく日本のジェネリックも先行きが危うそうでちょっと辛いですね。頑張れニッポン!
R6年4月7日(日)
春暖の候、桜も咲きました。4月に入って色々と様変わりして、やっと新年度に入ったなあと感じる今日この頃ですがジェネリック薬の供給不足は相変わらずで困っております。
そんな折、ジェネリック問題とは全く無関係と思っていた小林製薬から降って湧いて出た「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害」について日本腎臓学会から会員アンケートの中間報告が届きましたのでちょっと纏めて書かせて頂きます。
「患者さんは40歳〜69歳が約9割を占めます。服用開始は約4割の方が1年以上前ですが服用期間が短期間の方(開始時期2023年12月、2024年1月、2月)も発症しておられます。
初診時の主訴は半数以上の症例で倦怠感や食思不振、尿の異常、腎機能障害でした。
主な検査データ異常としてはFanconi症候群を疑う所見が目立っており下記特徴的所見が認められました。低カリウム血症(約65%が3.5 mEq/L未満)、低リン血症(約60%が2.5 mg/dL未満)、低尿酸血症(約60%が2.0 mg/dL未満)、代謝性アシドーシス(HCO3が約65%で18.0 mmol/L未満)、尿糖陽性(約87%が3+以上)また、血清クレアチニン上昇(2.3 [1.5-3.5] mg/dL)、尿蛋白増加(2.3 [1.5-2.9] g/gCr)、尿β2MG増加(21618 [3826-35763] ng/mL)、尿NAG増加(23.6 [14.5-33.1] IU/L)、なお、血清CK (87 [68-152] U/L)の上昇はなく、横紋筋融解症による腎障害は否定的でした。
腎生検は34症例に実施されており尿細管間質性腎炎、尿細管壊死、急性尿細管障害が主な病変です。治療は、アンケートでは透析療法を必要としたのは2症例、ステロイド治療を行ったのが1/4、被疑剤の中止のみが3/4程度でした。なお、約3/4の症例は改善していますが、改善の乏しい症例もあり、注意が必要です。」
とのことでした。毒物若しくは薬物性尿細管障害による急性腎障害のようですが原因はまだ未特定です。今後の続報を待ちたいと思います。
しかし健康のために高いお金を払って買ったサプリで健康被害にあうのはつらいですね。
R5年度 編集後記
この一年はコロナの5類移行とその後の「コロナはもう見て見ぬふり」?作戦が功を奏したのか、はたまた実際コロナの病原性が低下したせいか、世の中がやっと次のフェーズに動き出したような年になりました。
海外からのインバウンドもコロナ禍前に近づき、中国人の爆買いこそ消えたものの、昨今の円安のせいで代わりに他国からの旅行客が爆買いしてくれた結果、過去最高のインバウンド益を出したそうです。
テレビでオーストラリア人が「このチューハイはオーストラリアでは一本900円するのに日本ではたったの200円!サイコー!」と喜んでましたけど、かたやハワイやニューヨークではラーメンと餃子で4000円もするそうです。
このまま行くと将来日本の若者は以前の「留学生として海外へ」から「出稼ぎに海外へ」行かざるを得なくなり、日本はますます高齢者と労働人口の税負担が増えるだけの国になっていくんでしょうか?
東南アジアに逆「ジャパゆきさん」(知らない人も多くなったでしょうが)として渡航して、ベトナムやらの場末のバーで「昔はオタクの国から技能実習生とかいって若い子がいっぱい日本に来ていたのに、とうとう逆転しちまったねえ。」なんて愚痴りながら日本人バーのママとして酔客にお酒を注いだりしてるんでしょうかねえ?
しかしポジティブに考えると内弁慶な日本人が海外に出てたくましくなり、語学堪能才気煥発な人材となって一旗揚げるチャンス到来となるやも知れませんのでここはひとつ日本人の底力を見せてもらいたいと思ってます。
発災時にやたらヒステリックに叫んでいた女子アナだけが後に賞賛されたとのことですが、今後は「有事の時こそNHK」の真価をぜひ発揮して貰いたいものです。明日は我が身かも知れませんので…
来る令和6年度こそは平穏無事な良い年となることを切に祈ります。
7月14日(日)
毎日暑い日が続きます。夏もまだ始まったばかりなのに気温40℃とか、もう驚かなくなってきてますね。皆高騰した電気代を気にしながらクーラーを強烈にかけて換気せずに屋内にこもっているせいか最近またコロナが流行ってきているそうです。昨日も熱中症になったから点滴してほしいと駆け込んできた39℃の若者がコロナでした。幸いこのところコロナになってもすぐ良くなる軽症患者さんばかりだったので抗コロナ薬とかは処方してませんが、これから入院患者が増えてくると大変でしょうね。また、そろそろワクチンをどうするかの話も出てくるかと思いますが、月間保団連39(やや古い話ですが)の「新型コロナウイルスワクチンにおける情報公開(小島盛二名古屋大学名誉教授)」によるとワクチン接種100万回あたりの死亡率はインフルエンザワクチン:0.1〜0.2件に対し新型コロナワクチン:9.26件と実に46倍〜92倍だったとの事なので、反ワクチン派の都市伝説的な話だとしても、また次ワクチン打つかと言われたらちょっと躊躇してしまいますね。もうこうなったら神だのみでコロナの自然消滅を願うばかりです。
8月4日(日)
暑い日が続きます。
さて先日、アルツハイマー病治療薬で世界初承認のヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ凝集体モノクローナル抗体製剤のレカネマブ(商品名レケンビ;エーザイ)の調べものをしていた時に、同じアルツハイマー病の抗体医薬のドナネマブ(米イーライリリー社)も米FDAの承認を得たとの事なのでちょっと書きます。
「レカネマブは不溶性のアミロイドβプラークになる前の可溶性Aβプロトフィブリル及びフィブリルにくっつき凝集を抑制し、またミクログリアの食作用を活性化してAβプラークを減らす事でアルツハイマー病の進行を18か月で有意に27.1%抑制した。一方ドナネマブは脳に沈着してしばらくしてピログルタミル化という目印の付いたアミロイド班に結合除去する抗体医薬で18か月で22%(40%?)進行を抑制した。どちらもAβを脳から引き離す形になるので脳浮腫、滲出液貯留、脳出血が起こることがあり定期的MRI必須。非常に高価(年300〜500万円)なのが共通。」とのことです。まあいばらの道を歩いてやっと承認にこぎつけた2社には心より敬意を表しますが、アミロイドβのみで30%ならあとの70%は何なの?という素朴な疑問も湧いてきます。無論それもすでに猛烈に研究中でそのうち改良型や合剤が開発されて上市されることとなるんでしょうがそれまで待ち遠しいですね。
10月20日(日)
仲秋の候、だいぶ涼しくなってきました。
このまま穏やかな秋が続くといいのですがすぐにインフル・コロナの流行る真冬に突入するような気もします。
さて、以前、小林製薬の紅?コレステヘルプによる腎障害問題で5月に日本腎臓学会からの中間報告(主な検査データ異常としてはFanconi症候群を疑う所見が目立っており、腎生検では尿細管間質性腎炎(43.5%)、尿細管壊死(28.3%)、尿細管障害(8.7%)が主な病変です、といった要旨)を書かせて頂きましたがその後はほぼ無しのつぶてでした。しかしここに来て進展が見られたようなのでちょっと書かせて頂きます。
「医療機器などを手がける日機装と金沢大学は10月3日、プベルル酸の腎毒性を初めてヒトの細胞実験で確認したと発表した。プベルル酸は、今年3月に発覚した紅麹サプリ健康被害事件において原因の一つとみられている。両者は共同研究で確立した評価方法を用い、創薬研究用のヒト腎細胞を使ってプベルル酸の影響を評価した。
その結果、一定の濃度を超えるプベルル酸は腎細胞(近位尿細管上皮細胞)に毒性を発現させ、腎機能障害の原因となることが判明した。『プベルル酸は、腎障害を多発する抗がん剤シスブラチンと同程度の細胞毒性作用を持っている』。プベルル酸はアオカビから産生される天然化合物。日本腎臓学会の中間報告で尿細管間質性腎炎などの健康被害が報告されているが、ヒトの腎臓細胞への直接的な影響は検証されていなかった。」
何でも従来のin vitro毒性評価では結果不十分だったところ、日機装がヒト初代近位尿細管上皮細胞(RPTEC)を3次元で培養することでヒト腎皮質に近い薬物トランスポーターを発現する"3D-RPTEC"を開発し、より感度の高いin vitro評価を金沢大学が行ったところ今度は結果が出たそうで、動物実験の結果と合わせてプベルル酸が犯人確定となったようです。まあ被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げますが、原因がはっきりして対策が取れるようになったのは一つの進歩でしょうね。
11月10日(日)
天高く馬肥ゆる秋となりました。
暑さもやっと去り、熱中症の心配も無くスポーツに邁進・・・と行きたいところですが自分もコロナ禍と酷暑のせいで?屋内外スポーツなどめっきりしなくなり慢性運動不足の今日この頃です。
患者さんも「散歩しなくなったらめっきり足腰が弱くなった。転びやすくなった。」とおっしゃる方が増えてきた気がします。「まあ気候が良いから、これからはよく歩いて足腰を鍛えなおして下さい。」などと励ましますがあまり乗り気でないようです。WHOも65才以上の高齢者の場合、有酸素運動と筋トレを週2、3日以上行うよう推奨していますが、ジム通いとなると日本のフィットネスクラブの継続率調査では新規会員の63%が三か月後まで継続することが難しく、1年間継続出来た会員は4%未満だとのことです。運動習慣のない人が初めてジム通いするのはなかなか大変なようですが、医事新報2024/6/15の記事に「一日3秒、最大筋力の2/3の力で等尺性収縮(重さをこらえるだけ)を週5日以上やれば筋肉は増える」という記事が載っていてちょっと目からウロコでした。これなら汗もかかず時間も取らず継続可能かも知れません。今流行りのチョコザップなどは、会社帰りに着替えず数分で完結出来るので「なんちゃってジム」などと揶揄されているようですが、実は効果があり、理にかなっている実践的な施設なのかも知れません。まあビジネス的には今後どうなるのかは未知数ですが、ちょこっとの筋トレが結果にコミットするのは確かな様です。
12月31日(火・大晦日)
令和6年も残すところあと一日となりました。今日は仕事仕舞の休日診療所です。
以前の年末年始の休日診はインフル繁忙期で大変でしたがコロナ以降は状況が変わっており、今日はどんなもんかとやはりビクビクしながら出勤しました。
さて、最近読んだ記事で興味を持ったものといえば「経鼻投与のアナフィラキシー補助治療薬候補を承認申請;アルフレッサファーマは11月29日、経鼻投与のアナフィラキシー補助治療薬候補・アドレナリン(一般名)点鼻液の製造販売承認申請を行ったと発表した。蜂毒、食物、薬物等に起因するアナフィラキシーに対する補助治療薬として申請した。アナフィラキシーに対しては注射製剤が広く使用されているが、同社は経鼻投与を可能とすることで、迅速な対応とともに、患者や患者家族の負担軽減へ貢献することに期待を寄せる。承認されれば、国内初の経鼻投与のアナフィラキシー補助治療薬となる。アドレナリン点鼻液は鼻へのスプレー製剤で簡便で迅速な投与が可能だが鼻腔粘膜からの吸収ゆえに注射剤に比べ血中濃度の遅れ、このことが2相性のアナフィラキシー反応(アナフィラキシーが一度落ち着いた後も数時間後に抗原暴露がなくても再度同様の症状をきたすことで、アナフィラキシー患者の多くて20%程度に認め、遅れると72時間後まで起こり得る。2相性反応のリスクとしては、アドレナリン投与が頻回に必要であった患者、アドレナリン投与が遅れた患者など。)をどの程度予防するかが問題になるかと思われる。」
今までソバアレルギーの子のアナフィラキシーに、教員が躊躇してエピペンを誰も打たなかった為死亡した事例とか蜂毒ショックの際防護服が厚すぎて注射できなかった事例など枚挙に暇がなかったため、点鼻薬くらいの気安さで救命出来るのはとても良いアイデアだと思いました。莫大な予算がなくとも良いものを創れる見本となればと思います。
本年は誠に有難うございました。来年も宜しくお願い申し上げます。
R7年 1月3日(金)
新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、65才以上のコロナ定期接種(補助金付き)に合わせ、インフルも例年の如くワクチン接種が盛んですが、2024年秋からは経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(商品名フルミスト点鼻薬)が2歳以上19歳未満を対象に接種が開始されました。
注射の痛みがなく効果が一年間続くなどの話からか都会の小児科や大病院を中心に投与されているようですが、日本医事新報2024/11/30号にこのワクチンについて“何となく否定的な”論文が載ってましたのでちょっとかいつまんで書かせて頂きます
「米国FDAは2024年9月に経鼻弱毒生ワクチン(生ワクチン)の自己投与、介護者による投与を認めた。2014年2〜6歳日本人健康小児100人に試験され重篤な事象は無かった。生ワクチンの発生予防効果は2〜6歳群と13〜18歳群でプラセボと統計的有意差は出なかった。不活化ワクチン(従来の注射)は、生ワクチンに比し安定した高い効果を認め、特に1〜6歳での効果が高かった。米国では2015〜2016年シーズンに生と不活化の効果比較試験が実施され、その結果から生ワクチンの投与を2016〜2018年の間、止めるよう勧奨した。それによって米国では今はあまり使用されていない。生ワクチンは妊婦には禁忌、授乳制限、アスピリン制限、ゼラチンアレルギー禁忌、喘息児慎重投与となっている。なお2024年、日本小児科学会から経鼻生ワクチンの安全性などの見解が出されている。(一応読みましたが一般的注意程度でした)」
前回書いたアナフィラキシーに対するアドレナリン点鼻液と違って、こちらはあまり期待出来ないようです… 因みに製造販売はファーザーでなく第一三共でした。
2月9日(日)
寒い日が続きます。インフルエンザAもやっと収束してきたようでちょっと一息ついたところですが、この後コロナが来るか、はたまたインフルBが来るか今後も不安な日々が続きそうです。
さて、今後の不安というと先日、とある患者さんから「愛知奥三河今昔物語」という本を頂きまして、これはまあ、奥三河の歴史、観光、資源、産業、過去〜未来の問題点などが縦横に網羅された、総花的に書かれた本だったのですが、どうも「未来の奥三河は厳しい」的な内容に押されちょっと暗い読後感となってしまいました。特に身につまされたのは「奥三河の森林問題と対策」という章で、まとめると「1980年代はまだまだ木材価格もそこそこで森林所有者の経営意欲もあり仕事がなくなることはなかった。しかしどんどん値が下がり2020年には杉は5分の一、ヒノキは4分の一になった。これでは林業経営など不可能である。二年ほど前から「山を売りたいが買い手は無いか?」という電話がかかって来るようになった。聞くと山がどこにあるかわからないとか息子の迷惑になるので売ってしまいたい、とのことである。売りたい人ばかりで買い手はいないと答えるとお金を払ってでも売りたいと。でも引き取り手がない。山は利益を生まない税金を取られるだけの負動産となってしまった云々。」
実際ウチもそういった負動産をいくつか所有しており、これからちょっとでも整理したいのですが、どうやったらいいのか皆目見当がつきません。ただ同じように困惑している人も多く、市の方でも税金取りっぱなしで無視して放置している訳でもなさそうですので?